家族全員寝た深夜のリビングで鼻毛の処理をしていたら鏡の向こう側から視線を感じた。
あっついあっつい視線をね。
もうこれでもか!ってあっつい視線を!親の仇か!ってあっつい視線を!
見聞色の覇気かな?ってくらい敏感に察知した。
出川さんも熱いおでんぶつけられて「お前はバカか!?」ってスタッフにキレるくらい熱かったと思う。
一目惚れって一度もされたことないんだけど、たぶんこんな感じなんだろうなぁって思ってちょっぴりイケメンの気持ちわかった気がする。
でね、顔を上げて確認したんだけど、
ゴキブリだった。(´・ω・`)
もうなんていうか、「あっ……」っていう一瞬で悟りを開いたような顔してたと思う。
煩悩とかいつの間にか鼻毛と一緒に抜いてティッシュにポイ!してた。
向こうも「やべっ…見つかった…」って感じで微動だにしなかった。
サクッとナチュラルに目が合ったし、年賀状一回限りで交換した知り合いに久しぶりにバッタリ会っちゃったような微妙な空気が漂ってたし。
身体が金縛りにあったように動けなかった。覇王色の覇気かな?ってくらい動けない。これが世に聞くG-SHOCKか!つって。
しかもこっちはお風呂上りで上半身裸なんですけど?
しばらく冷戦が続いた後にようやく思考が追いついてきて「ゴキジェット」の単語が浮かんできた。
でも、動けない。
動いたら見逃す自信あったし。
これはもう目を離さないでゴキジェットがあるテレビが置いてある台まで行くしかねぇ!ってなった。
こんなことするならSASUKEの方が簡単だわって思ったし。
んで、立ち上がったんだけど、何故か中腰。
ちょっとしたカバディみたくなってたし。
「しかし、このような厳しい状況でも挑戦者は前に進まなければいけません!SASUKE 1st Stageが始まります!実況は私、古館伊知郎がお送りします!」
って実況されながら間接視野でゴキジェットの位置を把握しながらカニ歩きしてた。
たぶんこのとき世界で一番滑稽な姿してたと思う。古館さんもドン引き。
ここで身体が冷えてきてくしゃみを2連発。
が、それでもゴキブリはいたって冷静。
これから人類が開発した対ゴキブリ用抹殺兵器を我が手中に入れようとしてるのに、
「ほ~ん。で、それでどうすんの?」って余裕キメ込んでふて寝してるくらい微動だにしねぇの。
逆に早く着替えた方がいいんじゃないの?って促してるようにも見えた。
「未来で待ってる。」ってセリフすら聞こえてきそうなくらいだった。
なにあの精神力?これが人間と幾多の殺し合いを生き抜いてきた証だとでも言うの?
なんとかテレビの台に到着。うん!今すぐ行く!走って行く!
「大佐、無事"ブツ"を回収した。途中、綿棒の箱を倒して床にブチまけたが任務に支障はない!」
ここで気分はスネーク。
"ブツ"を手に入れたらこちらのもの。
「待たせたな!」
なんてお決まりのセリフを吐き捨て、武装色の覇気まで身に纏い、あとは噴霧するだけの簡単なお仕事!
海賊王に!!!俺はなるっ!!!(ドン!!)
これでヤツは余裕を失くし、動かないのではなく「動けない」状態に。
少しでも動いたら発射する。ゴキジェットは抑止力であるのだ。
完全に立場逆転!下剋上!!敵は本能寺にありィィイイイ!!!!
つって攻め込もうとしたら、廊下のドアが開いて弟登場。喉が渇いたらしい。
弟「なにしてんの…?」
……。うん、まぁ、わかる。目の前にゴキジェット片手にカバディしてるお兄ちゃんは誰が見たってヤバい人だ!
でも、今は緊急事態なんだ!伝われ!と思い、指差しながら
僕「ゴキb…」
弟「コーラの蓋じゃん」
僕「へっ!?」
言い忘れてましたが、僕は視力が悪いです。
どのくらい悪いかというと、5m先のコカ・コーラ ゼロの蓋をゴキブリと間違えるくらい悪いです。
次の日、弟のTwitterでネタにされていたのを発見しました。
これからは強く生きていこうと思います。